EXHIBIT 01 / EDINET · JPX

死の再定義 ── 裁判所から市場へ

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かつて企業の「死」は倒産を意味した。現在、上場企業の主要な退出経路は市場退出(上場廃止)である。法人格は消滅せず、事業も継続する。変わるのは株主構成と上場ステータスだけである。

JPXの上場廃止理由を分類すると、2017〜2026年の上場廃止756件のうち、 法的死(倒産)は9件(1.2%)、 市場死は91.9%。上場企業は「法的に死ぬ」ことがほぼなくなった。

上場廃止の類型別構成(年次)

0 25 50 75 100 125 '17 40 '18 61 '19 42 '20 57 '21 86 '22 77 '23 61 '24 94 '25 125 '26 113
  • 法的死(倒産)
  • 市場死(MBO・子会社化・買収)
  • 統合(合併)
  • 上場維持基準への不適合
  • その他(申請・内部管理)

出典: 日本取引所グループ 上場廃止銘柄一覧(株式) / 収集 2026-07-21。集計は上場廃止「日」の年。2026年は進行中。

緑(市場死)が各年の大半を占め、赤(法的死)はほぼ視認できない。上場企業の消滅を判定する場所は、裁判所から証券取引所へ移った。なお2026年に現れた琥珀色(上場維持基準への不適合)は、2022年の市場区分再編に伴う新しい退出経路である。

市場死の内訳(全期間)

市場死(戦略的退出)をさらに分解する。いずれも法人格は存続し、事業は継続する。

退出手段件数構成比
他社による買収(TOB) 216 31.1%
完全子会社化 212 30.5%
完全子会社化・スクイーズアウト 178 25.6%
支配株主による買収 45 6.5%
MBO 44 6.3%

「完全子会社化」と「スクイーズアウト(株式併合による少数株主排除)」を合算すると、市場死の過半は親会社・買収者による取り込みである。MBO(経営陣による買収)は市場死の一部を占めるに過ぎないが、金額規模では突出する(2023年の大正製薬HDのMBOは約7,100億円で日本企業最大)。

解釈

MBOで上場廃止した企業は「死んだ」のか。法人格は存続し、事業も従業員も取引先も残る。変わったのは株式が市場で売買されなくなったこと、それだけである。倒産が「法人格の消滅」だとすれば、市場死は「上場ステータスの消滅」に過ぎない。企業寿命を論じる際、この2つを同列に扱うことはできない。

企業の死に場所が、裁判所から証券取引所に移った。これが20年間で起きた最大の構造変化である。

分類定義: 法的死=破産・民事再生・会社更生・特別清算等/市場死=MBO・完全子会社化・他社/支配株主による買収・株式併合による非公開化/統合=合併/基準=上場維持基準への不適合。1件が複数手段を伴う場合は主たる理由で分類。外部統計(東京商工リサーチの倒産件数等)とは母集団・分類が異なる。